望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「だから、一人で無理をせず、私を頼って欲しい」
 ですが、とカレンは言いかけて「はい」と返事をした。

「カレン」

 カレン自身もレイモンドに名を呼ばれることは慣れていない。名を呼ばれるたびに、ピクリと身体を震わせる。

「あれを、調べておくように言った」

「そうですか」

「君は、気付いていたのか? あれに」

「さあ。なんのことでしょうか。私はただ、あの方が道を塞いで邪魔でしたから」
 そう言って笑みを浮かべる姿は悪女。
「旦那様には、ご迷惑をおかけするつもりはございません」
 そして消え入るような声で言う。悪女になりきれない悪女。

「カレン。一人で無理をしないでおくれ」
 それはレイモンドの心からの願い。それが彼女に届いたかどうかはわからない。
< 133 / 269 >

この作品をシェア

pagetop