望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 あの帰りの馬車で、レイモンドが「痛むか?」と隣に座るカレンの頬に触れたとき、彼女の肩がぴくりと跳ねた。
 驚き、嫌悪、侮蔑、彼女が自分に向ける感情がどれなのかわからない。

「自ら望んだことですから」

 返ってきた言葉はそれだった。

「もう少し、俺を頼ってくれ」
 息を吐き出すように、その言葉を吐き出した。それに驚いたカレンは視線をこちらに向けた。

「旦那様、どうかなされたのですか?」

 その目に宿る感情はなんと呼ぶのが正しいのか。

「お前は私の妻だ」

「はい」

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