望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「重くない?」
 黒豹はそれを乗せたままのそりのそりと動き出し、そして走ってどこかへと消えた。それをどこに置いてくるのか、カレンは知らない。

 屋敷へとゆっくりと戻る。
 初めて人を殺めた。魔法は人を助けるもので、殺すためのものではない、とあれだけ母親は言っていたのに、それを破ってしまった。
 今になって身体が震えてくる。
 なぜか、涙が流れてくる。
 怖かったのだろうか――。
 生きていた者が、あっけなく魔法でその命を失った。
 でも彼らも同じことをやったのだ。ローゼンフェルドの無抵抗の民たちに。人を救うために存在している魔法で、いくつもの数えきれない人たちの命を奪った。そしてそれは今でも続いている。
 捕虜にされている獣人たち。そしてさらに、隠れ獣人狩りをしようとしているダレンバーナ。この世界から獣人を抹殺しようとしているのか。

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