望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 許さない、許せない。
 その気持ちを噛み締めるかのように、カレンは一歩一歩足を運ぶ。
 部屋の下までくると、浮遊の魔法を使ってバルコニーへと飛び上がる。
 この恰好のままではベッドに潜るのは無理だろう。先に汚れを落とさなければ。
 そう思うものの、身体が重くて動かす気力もない。部屋に入ると、ソファの足にもたれかかってしまった。そして、少し、意識を手放した。
 カタンという物音でふと、目を開けた。ここに戻って来てからどれくらいの時間が経ったのか。多分、それほど経っていないはず。

「カレン」

 自分の名を呼んでくれる人は、一人しか知らない。

「どうした、何があった?」
 部屋の惨状を見て気づいたのか。それとも、ここに倒れているカレン自身を見てそう思ったのか。

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