望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 だが、アドニスが何やら動いたらしい。三日もするとそのわだかまりがなくなり、四日目の朝、こうやって侍女のメアリーから声をかけてもらえるようになった。残念ながら全員が全員というわけでもないのだが、それでもいい。
 ダレンバーナの花嫁は、ローゼンフェルドの人間から憎まれた方が、カレンにとっては都合がいいからだ。

「メアリー。この素敵なお花をいくつか、お部屋にも飾りたいのですが」

「でしたら、庭師のマーキンにお申し付けください」

 広い庭はまるで迷路のようだ。その迷路の中にも色とりどりの花が咲いていて、気持ちを穏やかにしてくれる。心の底からじんわりとしてくるのだ。
 きっと、この花の面倒をみている者たちの心が温かいに違いない。
 爽やかで少し湿気の多い風を受けながら、花の迷路を散歩する。これほど心穏やかにこうやってのんびりと散策するのは、ここへ来てからは初めてのこと。
 アドニスにはあとで感謝を伝えなければならないだろう。

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