望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 カップの残りの液体を勢いよく飲み干すと、やっぱり冷たかった。テーブルの上に両手をついてゆっくりと立ち上がる。ここに来た目的を果たすために。
 カレンの目的。それはこの家に隠されているであろう魔導書たちと、そして母親によって封じ込められた魔法の解放。今でも魔法を少しは使えるが、この力では全然足りない。生活魔法は問題なく使えるが、体力の回復魔法や怪我の治癒魔法は一日に何回も使えない。攻撃魔法も同じ。いいところ、一日一回か二回。それでは全然足りないのだ。
 家の掃除をしつつ、魔導書の隠し場所を探す。その魔導書を見ればきっとこの封じられた魔法も解放できると思うのだが。

 肩で大きく息を吐き、額の汗をぬぐう。一心不乱に床を磨き上げるのは、心の中にある感情を整理するためには都合がいいらしい。さらに、脳みその中にある記憶を掘り起こすためにも。
 母親の魔導書は、本棚の一列にぎっしりと並べられていた。今思えば、王宮を追放された母親が、よくあれだけの魔導書をこんなところにまで持ってくることができたものだ。確か、母親はあれらを禁書と呼んでいた。力の無い魔導師が読んではいけない、その心を悪に染めた魔導師は読んではいけない、そして何よりも、魔法を人殺しの道具に使おうとする魔導師は読んではいけない、と。

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