望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 床を磨き上げたカレンは、次は浴室の掃除をする。一年も空けていた家であるのに、さほど傷んでいないのは母親の魔法のせいだろう。彼女は気高く、そして優しかった。
 本当に望まれていない子だったのだろうか、と疑いたくなるほど。
 今となってはわからない。

 王宮に引き取られてからも、残念ながら父親と会うことは叶わなかった。むしろできなかった。あそこには一年ほどいたはずだが、会えなかった。ブレイグとケネスはなんとか会わせようと企ててくれたのだが、王妃側の人間によってそれはあっけなく潰される。
 父親は本当に生きているのか、と何度も疑いたくなったが「レイア様がお守りしているのです」というケネスの言葉を信じるしかなかった。
 父親に会いたい。会って話がしたい。そして聞いてみたい。
 あなたは、私が生まれてくることを心から望んでいたのですか、と。

 ふっと家の中に風が吹き抜けることに気付いた。入り口の扉が開いている。そこにいるのは一匹の黒い豹。口には魚をくわえている。

< 186 / 269 >

この作品をシェア

pagetop