望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 中身はあのレイモンドであると頭ではわかっているにも関わらず、やはりこの子は可愛い。思わず、笑みがこぼれてしまう。
 カレンは乾いたタオルを手にして黒豹に近づくと、黒豹の口からはポトリと魚が落ちた。むしろ、そこに置いたのだろう。床の上でまだピチピチとその身体を打ち付けている。
 カレンが身体を拭いてあげると、それは気持ちよさそうに顔をあげた。中身は彼であるとわかっているはずなのに、温かい気持ちになる。だけど、中身は彼。だから、どう声をかけたらいいかがわからない。
 彼の頭にタオルをのせると、カレンは徐々に弱っていく魚を手にした。背中を向けてから「ありがとう」と呟く。その黒豹に。
 きっと黒豹はそのうち人間に戻るのだろう。そうなったとき、カレンは今と同じ気持ちでいられるのかがわからなかった。

 この家で生きる術は、母親に教えてもらった。だから魚をさばくこともできるし、森の中から必要な食糧を取って来ることもできる。それが植物であろうが動物であろうが。

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