望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「レイ」
 カレンは小さく呟く。
 昨日、何度も呼んだその名のはずなのに、今日、あらためてそうやって口にするとなぜか恥ずかしい。
 くすり、とレイモンドは笑った。何がおかしいのか。

 カレンはゆっくりとベッドから抜け出そうとするが、捕らえている彼の手がそれを許さなかった。
「もう少し、こうしていたい」
 という言葉に流されて、また身を任せてしまった。

 次に気がついたときには、太陽は随分と高くまで上っていた。だが、上りきってはいない。隣にいたはずのレイモンドは既にいなかった。
 重い身体を引きずるようにして、彼女はベッドからおりた。
 向かう先は浴室。そして、髪を洗おうとして気が付いた。髪の色が戻っていることに。この家に住んでいたときの髪の色。母親と同じ薄い焦げ茶の髪。

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