望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 急いで浴室から出て、とりあえず着るものは身につけて、外へと通じる扉の脇にある鏡に自身を写す。間違いない、やはり戻っている。母親に魔法を封じられる前に。

 何が起こったのか、自分でも理解が追いついていない。だが、この髪の色がかわったということは、封じられた魔力が解放されたということに違いない、と思いたい。抑えきれない興奮を胸に抱えていると、その扉が開いた。

「カレン、なのか?」

 扉の先にいたのは、外に食料の調達に行っていたであろう、レイモンドだった。

「旦那様、お帰りなさい」

 平静を装って、彼女が発した言葉はそれ。
 だが、レイモンドは腕に抱えていた食料たちをパサリと落としてしまった。無言でカレンに近づくと、無言のまま彼女を抱きしめる。

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