望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 メアリーに案内された庭は広かった。噴水もあった。天気の良い日はここで本を読んでもよさそうだ。
 水の湧き出る音も心地よいし、散る水しぶきもたまに肌に触れる分には気持ちが良い。

「メアリー。今日はありがとう。とても楽しかったわ」
 カレンは目を細め、今来た道を名残惜しそうに眺めている。

「いいえ。礼を言われるようなことはしておりません」
 その口調は当たり前のことをしただけです、と、そう言っているようにも思える。
「明日からは結婚式の準備で忙しくなりますから、今日のうちに奥様にはこの敷地内を案内しておきたかったのです」
 それが私の仕事ですから、という言葉も聞こえたように感じた。

「あなたはそう言うけれど。私にとってはとても嬉しいものなの。それに、今日は本当に楽しかったわ。思いがけない出会いもありましたし」

「奥様は、アドニス様がおっしゃっていたように、他のダレンバーナの花嫁とは違うようですね」
 メアリーが唇の端を少しだけ持ち上げたことに、カレンは気付かなかった。
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