望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「そう?」
 メアリーの返事の仕方がどこか気になる。だからカレンは不思議そうに首を傾けた。

「この子はここに住んでいるのかしら?」

「たまに、迷い込んでくるようです」
 メアリーは表情を変えずにそう答える。
 やはりメアリーはこの豹のことを知っていたのだ。知っていながらも知らない振りをして、そして途中でそれを誤魔化すことをやめている。それにどんな意図があるのか。賢いのか、賢くないのか。

「そう。だったら、また会えるわね」
 カレンはすっと立ち上がった。名残惜しそうに豹がカレンの足元にすり寄ってくる。その仕草が可愛らしく、カレンも離れがたくなる。

「ごめんなさい。そろそろ戻らなければならないの」
 言い、カレンは腰を曲げてそれの頭を撫でた。
「また、遊びに来てもいいかしら?」
 いいよ、とそれが言ったようにも聞こえた。

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