望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「兄さん、義姉さん、ご結婚おめでとうございます」
 アドニスが、顔中に幸せな笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「ああ」
 と返事をするレイモンドに対し。
「ありがとう、アディ」
 と柔らかい笑みを浮かべるカレン。

 その笑みはレイモンドに対して向けているのではなく、義理の弟となるアドニスに向けているもの。レイモンドはそれに気付いただろうか。夫には冷たい笑みを浮かべ、義弟には優しい笑みを浮かべている妻の姿に。

「結婚式だというのに、そちらの国からは誰も来ないのだな」
 レイモンドの冷ややかな声。

「ええ。政略結婚ですから。誰も、めでたいとは思っていないのです」
 カレン自身でさえそう思っている。だから、アドニスからの一言が嬉しかった。
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