望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 彼は心の底から「おめでとう」と祝ってくれたのだ。めでたくないこの結婚であっても、表面上だけはそう繕うとする気持ちが嬉しい。そして、この義弟は賢い。恐ろしいくらいに。

「旦那様。ご迷惑はおかけしませんので、どうか私をこのジェルミー家においてくださいませ」

「そう言え、と言われたのか?」
 視線も冷ややかだ。

「いいえ。私の本心です。最低限の衣食住があれば、私はそれ以上、望みません」

「ふん」
 レイモンドは顔を背けた。
 そんな二人をアドニスは乾いた視線で見つめていた。
 
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