望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「アディ。私は最初から何もかわっていないわよ。強くて優しい、というあなたのその認識が間違っていただけ」
 そこでカレンはお茶を飲む。そしてそれを飲み終えると。
「アディ。これからまた戦が始まるわ。あなたはあなたの大事な人たちを守りなさい」
 ごちそうさま、と小さく呟き席を立つ。

「義姉さん、戦が始まるとはどういう意味ですか?」

「言葉の通り。詳しくは、旦那様から聞いてちょうだい」

「義姉さん」

 アドニスの声を背に受けながら、カレンは黙ってその場を離れた。

 アドニスは気付いていた。カレンがこの家に戻ってきてから、ニコリとも笑わないことに。以前は、はにかんだように、困ったように笑顔を浮かべていた。それでもその笑顔が、心の底からのものであることを知っている。
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