望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「カレン。泣いているのか」

「ああ、旦那様。こんな夜更けにどうされたのですか?」
 流している涙など、無かったことのように。

「君に、会いたいと思った」

「そう、ですか」
 カレンは顔を横に背ける。

「カレン。一つだけ約束して欲しい」

「何を、ですか」
 レイモンドに顔を向けることなく、カレンは答えた。

「どうか、生き延びることを考えてくれ」
 私のためにも――。

 ダメだ。この人は全てをわかっているのだ。
 カレンはまた静かに涙を流した。
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