望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「そうか」
 レイモンドは騎士団の服を脱ぎ、着替える。
「あの女は?」
 主のそれに、ジョンソンはすぐさま答えられなかった。まずレイモンドの言う「あの女」に心当たりがなかったのだ。少なくともジョンソンにとっては。
 そして、考えてから「奥様ですね」
 にこやかに言い「奥様も、このお時間はお散歩されていると思います」

 それに対してレイモンドは、そうか、とは言わなかった。忌々しく舌打ちをする。今すぐにでもアドニスと会って話をしたいところだが、あの女には会いたくない。なぜあの女まで庭に出て散歩などしているのか。むやみに出歩いて欲しくないところではあるが、だからといってこの屋敷内に閉じ込めておけば、それはそれで問題になるだろう。何しろ、あの女はダレンバーナの女なのだから。

 レイモンドは顔を歪めた。だが、庭は広いし、アドニスがいそうな場所はわかる。着替えを済ませたレイモンドは庭へと足を向けた。

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