望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 レイモンドにとっても、この庭は心安らぐ場所であった。あの忌々しい花嫁のことも忘れさせてくれるような。
 この花たちは、レイモンドの母が好んでいた花が多い。
 残念ながらその母も、レイモンドが十五のときに病で亡くなった。

 その後、後妻であるアドニスの母親がきた。彼女はレイモンドに対して、冷たくあしらうとか、そういったことはしなかった。とても優しい女性だった。
 ただレイモンドは、彼女に甘えるには少し大人になり過ぎていた。
 彼女がこちらにきてから二年経ったときに、アドニスが生まれた。レイモンドは年の離れた弟を大層可愛がっていた。父と母と弟と。不格好な家族ではあるが、それぞれを思い合う家族でもあった。多分、幸せだったのだと思う。年の離れた弟が自分の手を力強く握ってくれた時、この無垢な赤ん坊を守りたいと、そう思ったのだから。

 だが、それを全てぶち壊したのが先の戦争だ。騎士団の団長としてその地位についていたレイモンドは戦場に赴いた。
< 43 / 269 >

この作品をシェア

pagetop