望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 ダレンバーナによって蝕まれていくこの国と、そしてこの心。それを彼女に救ってほしかった。そう、彼女に救いを求めていた。

 だが、一年ぶりにそこへ足を踏み入れると、すでに廃屋と化していた。人が住んでいたのはずいぶん昔のことなのだろうか。
 そこには争った跡が見受けられた。彼女は何と争ったのか。だが、彼女が生きていることだけはわかる。感じるからだ。彼女の鼓動を。
 誇りをかぶった机の上には、読みかけの本。それにはしおりが挟まっていた。押し花のしおり。
 思い出を持ち帰っても罰はあたらないだろうか。
 彼はその本からしおりを抜き取って、そっと胸のポケットへとしまった――。

 レイモンドは過去を思い出しながら、庭を歩いていた。弟の姿を探しながら。だが、ふと足を止めてしまったのは、聞き覚えのある歌が耳に入ってきたからだ。
 女のか細い声。どこか聞いたことのあるメロディ。
 風にのって、どこからか聞こえてくる。弟を探していたレイモンドは、いつの間にかその歌声の主を探し始めていた。それだけその歌は彼にとって懐かしいもの。

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