望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「あの女はただの黒豹を膝にのせて、こうやって撫でているのか」
 言いながら、レイモンドも優しく弟の頭を撫でている。

「ええ、そうですよ。義姉さんは、人間が嫌いなようですから。特にダレンバーナの人間が」
 人の姿であったなら、そこでくくくっという笑い声が聞こえてきそうな言い方だった。だが、残念ながらこの姿ではそういった笑い方もできないアドニス。

「あれも、ダレンバーナの人間だろう」

「兄さんはもう少し義姉さんと話をした方がいい」

「なんだと」
 レイモンドは右目を細くした。

「義姉さんは、ダレンバーナの人間ではない。面白い人間ですよ」
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