望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 きっとアドニスは人間の姿だったのであれば、そこでまた笑っていたに違いない。
「ところで兄さん。僕を探していたのでしょう?」
 どうやら弟は、兄をいじるのをやめたようだ。本題に入る。

「ああ。いろいろと話をしたいと思ってな」
 やはりレイモンドは、豹の頭を優しく撫でる。これが弟だからなのか、人の形をしていないからなのか。理由はわからないが。

「この姿では不便ですか? 僕も兄さんに伝えておかなければならないことがあるのですが、誰かがいるような場所ではないほうがいいのです。ですから、できればこのままの方がいいと思っています」
 話をするに人型をとる必要があれば、そちらになっても問題はないのだが、ただレイモンドとアドニスが話をしている、という状況を、この姿を知らない人たちに知られるのはよろしくない。特に、カレンが言っていた新しく雇っていた料理人なる人物には。

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