望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「カレン。いつか必要になるだろうから、あなたにも魔法を教えるわ」
 と母親から言われたのは十歳の時だったと思う。
 魔法、その言葉は本で読んでなんとなく知っていたけれど、それを使えるような力が自分にあることには気付いていなかった。

 それから時間を見つけては、母親が魔法について教えてくれた。まず、魔法とは何か、どのようなときに使うものか、そしてどうやったら使えるか。
 そして、魔法を使うことができる魔力持ちは国から管理されて王宮魔導師となることが義務付けられている、ということも。
 だから、カレンのその力は誰にも見せてはならない、ということを母親は口にした。つまり、カレンが魔法を使えることを知っているのは母親だけだった。カレンの魔法は、他の者に絶対に教えてはならない、と。ただ、住んでいる場所が場所なだけに、その心配はなかった。

 その小さな家はとにかく不便な場所にあったにも関わらず、食べ物だけは豊富にあった。山の中だからかもしれない。木の実や動物の肉、川を泳いでいる魚。それ以外にもカレンは母親と少しの野菜を作っていた。本当に質素だけれど、小さないくつもの幸せに囲まれていた。
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