望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 母親はときどき山からおりて、何かを手にして帰ってきていた。いつ、どこで、どうやって手に入れたものかはわからない。それは本だったり、衣類だったり。だけど、カレンは山からおりたことはなかった。母親が出かけるときは、一人でその小さな家の中で留守番をしていたのだ。だけど、一人で待っている間、怖いという感情はなかった。
 なぜなら、その家には動物たちも遊びに来ていたからだ。小鳥などの小さな生き物から、獅子のような体の大きな生き物まで。他に人間がいないからか、彼らがカレンの友達でもあった。

 カレンが十五歳になるとダレンバーナはローゼンフェルドと戦争を始めた。確か、お互いは不可侵条約を結んでいたはず。そう、母親から聞いていたから、カレンもその条約についてはなんとなく知っていた。
 それにも関わらず、と母親は嘆く。国境にあるこの家からは、二国間のいざこざが赤い光となってよく見えた。いたるところでその赤い光が上がっては、長く輝いていた。それは炎というもの。

< 62 / 269 >

この作品をシェア

pagetop