望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う


 寝苦しくて目が覚めた。なぜか喉が引きつるほどからからに乾いていた。枕元の水差しで口の中を潤すと、ゆっくりとベッドから降りた。
 何か夢をみていたようだが、それを思い出すことができない。それが夢というもの。
 フォーフォーと、風が鳴くような音が聞こえたが、恐らく鳥の鳴き声だろう。少し窓を開け、バルコニーへと足を向ける。少し、風が吹いていた。冷たい風が頬を撫でていく。寝間着姿のままでは少し寒かったかもしれない。
 両手で肩を抱きながら部屋へ戻ろうかと思ったとき、何かの音が気になった。バルコニーの向こう側、そしてやや下の方に視線を向けると赤く光る何かが二つ。何だろう、と思って目を凝らしてみるがよくわからない。

 気になる。気になったら眠れない。

 手すりに手をかけ、ふわりと身を翻してカレンは二階から飛び降りた。そう、文字通りふわりと。浮遊の魔法をかければ、カレンだってふわりと飛び降りることが可能なのだ。右ひざをついて着地をすると、その赤い光の持ち主と目が合った。ツンと漂うのは血の匂い。

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