望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「ごめん、痛かったよね。でも、よく頑張ったわね」
 カレンは優しくその豹の頭を撫でた。
「お水、飲む?」
 水差しを豹の顔の前に差し出すと、それが飲みたそうに顔をあげたので、水差しを口元に預けた。

「喉も乾いていたのね」
 カレンは優しく黒豹に笑いかけた。
 それから濡れたタオルで、その豹を優しくふきあげると、気持ち良さそうに、豹は顔をあげていた。それを見て、カレンはまた優しく笑いかける。それは心からこの豹が可愛らしいと思っているのと、その豹を安心させるために。

「静かにできる? あなた、まだ傷も治っていないから、静かにできるならここにいてもいいわよ」
 カレンは唇の前に右手の人差し指を一本立てて、それに伝えた。
 だが、豹は何も言わない。先ほどからも少しは唸るような声をあげるものの、吠えるようなことはせず、ただ静かだった。

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