望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「おはようございます」
 カレンが食堂に行くと、すでにアドニスがいて、そうカレンに声をかけてきた。だが、レイモンドの姿は見えない。

「旦那様は、昨日はお帰りにならなかったのですね」
 ジョンソンに尋ねると「そのようです」と言葉が返ってきた。

「兄さんは、二、三日は戻らないそうです」
 アドニスが言う。

「そうですか」
 カレンはため息と共にそれをこぼした。別に寂しいわけではない。いてもいなくても、どちらも変わらないのだから。
 ただ「いない」というその事実だけを確認したかったにすぎない。

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