望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 本来であればあの戦争でダレンバーナに切先を向けた騎士団たちは全員処刑されてもおかしくはなかったのだが、レイモンドの部隊は全員それを免れた。今は、王都内の警備と要人たちの警護が主な任務だ。それはローゼンフェルドの全国民の反感を買わないような、絶妙な人事であると誰もが思っている。

 しかしレイモンドは、その合間に地下牢に繋がれている仲間たちをどうにかして解放できないか、ということを考えていた。また、任務が休みの日にはダレンバーナにも足を伸ばし、あちら側の捕虜となっている仲間たちの様子も見に行っていた。いつか彼らを解放するために。
 それが、あの戦争で生き延びた自分の使命であると思っていた。

 そんなときにあのダレンバーナの女がやってきた。自分の動きが悟られて、見張りをつけられたのかと思った。
 だが、純粋に政略結婚だった。彼女の地位というものは危うい。それに自ら気付きながらも、それに気付かない振りをして振舞っている。

 獣化(じゅうか)した自分に見せる彼女の表情は、柔らかくて優しい。少し、弟が言っていたことを理解できるような気がした。それと共に、彼女が利用できるのではないかと、レイモンドはそう思った。
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