望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
 間違いなく魔導書だ。残念ながら黒豹には読むことができない。仮に獣の姿から人型に戻ったとしても読むことはできないだろう。魔導書は魔力を持つ魔導師しか読めないと言われている。だから、こんなものを持ち歩いて、こんなものを読んでいる彼女は間違いなく魔導師。
 いや、あれだけの力を見せつけられて、疑っているわけではないのだが。
 むしろ、これだけの魔導師をダレンバーナが気付いていない方が面白い。先の戦争も、ローゼンフェルドが負けたのは、魔導師のせいだ。彼らが獣人騎士たちに対して半獣化できないような魔法を使ってきたからだ。

 獣人騎士の幾人かは処刑され、幾人かは捕まった。
 獣人騎士ではない幾人かは、国の中枢機関として残っている。レイモンドは父親が処刑されたということもあり、獣人でありながら獣人騎士ではなかったため、生きながらえることができた、と思っている。
 運が良かったのか悪かったのか。レイモンドが獣人騎士になれなかったのは、番がいなかったからだ。運命の番。番を手に入れた獣人はその力をさらに増すとさえ言われている。

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