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明け方。


私達は寝室に行かず、一晩中リビングで抱き合った。


薄暗い中、裸で床に寝転び、今も蒼君に抱きしめられている。


「少し、寝よっか?」


「うん」



そう言って、蒼君の胸にさらに顔を埋める。


「目が覚めたら、ここを出よう?」


「え?なんで?」


蒼君の言葉に、私は驚いて蒼君の顔を見た。


「もし警察が本気で俺を探すなら、上杉家の別荘なんて、直ぐに辿り着くだろ」


「そっか…」


じゃあ、ここは安全ではないのか。


ずっとこの場所に居るつもりはなかったけど、
これ程早く出ないといけないとは思わなかった。


「こうやって、ゆっくり寝れるの最後かもしれないから、寝よう」


蒼君は、両目を閉じた。


それを見て、私も両目を閉じ、再び蒼君の胸に顔を埋めた。


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