trade
蒼君がブレーカーを上げてくれて、
電気が使えるようになったけど。


私達は、トイレやバスルーム以外の電気は付けない。


暗いままだけど、目が慣れて来て、
特に困る事はそれ程ない。



交代にシャワーを浴びた後、暗い中、カップのインスタントラーメンを二人で食べる。

そのラーメンは、ここのキッチンにストックされていたもの。



「旨いな」


蒼君のその言葉に、頷いた。


とても空腹だったからか、こんな場面だからか、
それはとても美味しかった。


私は最近、インスタントラーメンばかり食べていて飽き飽きしてたはずなのに。


「けど、着替えもあって良かった」


シャワーの後、蒼君も私も着替えた。

元々の服は汗だくになっていた。



ただ、下着の替え迄はないから、下着は洗濯機で洗い、現在乾燥機にかけている。


蒼君の方は、何着かパンツも置いてあったみたいだけど。



「GWに、恵梨香とここに来たんだ」


「そう」


やはり、この私が今着ている服は、恵梨香さんのものか。


上杉朱の母親のものにしては、デザインが若者向きなので、もしかしたらそうなのかな?とは思っていたけど。


それにしても、私なら選ばないような、可愛い服だな。


淡いピンク色の、プリーツのスカート。


「未希」

そう名を呼ばれ、腕を引かれ引き寄せられる。


割り箸が、床に落ちた。



「蒼君、どうしたの?」


「未希、好きだよ」


そう言って、蒼君は私にキスをして来た。


ここ最近、蒼君とキスだって飽きるくらいしているのに。


凄くドキドキとするし、
なんだか、泣きそうになった。


もしかしたら、この夜が最後なんじゃないかって。



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