不器用主人の心は娘のもの

彼の期待と贈り物

 朝がやってきた。

 彼はいつものように仕事に一段落をつけ、主人の姿で食事を終え執事の姿に着替えると、屋敷に入ってすぐのもう一つの空き部屋に向かった。

 部屋から娘にやるぬいぐるみの入った箱を運び出し、自室へ。

 途中、部屋に向かうコリーンに遭遇すると、彼女は目を丸くして驚いていた。


 彼は自室へ戻ってからバラドに声を掛ける。

「これを娘の部屋へ運びたい。バラド、頼めないか…?」

「これは…」

 バラドが置かれた箱を見る。
 彼はバラドの顔色をうかがいながら打ち明けた。

「…娘に、やるものなんだ…」

「…御主人…」

 バラドは彼をじっと見つめる。

 きっと呆れているのだろう。あれだけ自分に忠告をしたのだから無理はない。
 しかし、

「…分かった」

 バラドはそれだけを言うと箱を持ち上げ、彼を見る。

「すまない…」

 彼はそう言って頭を下げると、バラドを連れ立って娘のいる部屋へと向かった。


 部屋に着きノックのあと呼び掛けると、コリーンがドア越しに応える。

「テイル様?申し訳ありませんが、まだお部屋のお掃除のし始めでして、娘の着替えも終わっていませんの」

 しかし一刻も早く娘に手渡したい彼は、少々焦りながら返した。

「掃除はまだ構わない。用がある、開けさせろ」


 少しするとコリーンがドアを開け、バラドと彼は部屋に入る。

 バラドの持った箱を見たコリーンと着替えが済んでいた娘は、案の定似たように驚いていた。
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