婚約解消しないと出られない部屋

3−7 なんて不幸な事故なの



頑張って自分を落ち着けようとしていると、ジルフリート様が、ぽつりと呟いた。


「……だって……きだ」
「……?」

 声が掠れてよく聞こえない。



「俺だってオレリアが好きだ!!!」



 急に大音量で叫ばれて、私はその内容が頭に入ってこない。
 私はハンカチで涙でぐちゃぐちゃの顔を隠すようにしながら、ジルフリート様を見た。
 そこには、今まで見たことがないような、必死な形相のジルフリート様がいた。顔は真っ赤だし、目も充血している。ちょっと怖いぐらいである。
 しかし、彼は一体なんと言ったのだ。
 私を、好き?

「…………気を遣って?」
「違う! 出会った時から、ずっとずっと好きなんだ! 俺はオレリアが好きだ! オレリアなら目に入れても痛くない! さっきの映像は全部俺だ!!!」

 ジルフリート様、さっきまで違うって言い張ってたのに!

「オレリアは気持ち悪くなんてない、俺の方が数倍気持ち悪い! 俺は探偵を雇ってオレリアの足跡を毎日報告させていたし、画家を雇ってありとあらゆる角度のオレリアの肖像画を描かせたし、オレリアに近づこうとした男を何人も家の力を笠に着て追い払ったし、オレリアの好みを知りたくてオレリアの知り合いだという令嬢に問い詰めるように色々と話を聞いたし、オレリアの情報をネタにいつだってアリアーヌに強請られている!」

 ……!?
 探偵? 画家? 男? 全然気がついてませんでしたわ!?
 それにアリアーヌ、あなた一体何をしているの!?

「ジ、ジルフリート様……」
「オレリア、君が好きなんだ! こんな変態な俺を見捨てないでくれ……!」

 へ、変態……。
 どうなのだろう。ジルフリート様は変態なのだろうか。


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