婚約解消しないと出られない部屋

3−8 ボーナスタイムが到来しました




 急に野獣のような目でギラギラこちらを見ているジルフリート様に、私はあわあわしながら顔を赤くする。


「ちょ、ちょっと待ってくださいまし!? 扉はもう開いているんじゃないかしら!」
「試してくる」

 スタスタ歩いて扉に向かったジルフリート様は、ドアノブを掴んで扉を開こうとしたけれども、ガチャガチャと音がなるばかりで扉が開く様子は一向にない。

 困り果てていると、急に映像装置が光り輝き、再度、私達をここに閉じ込めた犯人の映像が映し出された。

『はーい姉さん! 仲直りしましたか!?』
『手錠が外れた気配がしたから、やってきたよ! 二人ともうまくいったのかな?』

 呑気な顔をして現れた二人を、私もジルフリート様も、ジトリと横目で睨みつける。

「おい、素直な気持ちを伝えても部屋から出られないぞ。どういうことだ!」
『えー、兄さん、僕達言ったじゃないですかぁ』
『素直な気持ちを伝えたら、鎖は解除できます。でも、部屋から出られるとは言っていないのです!』
「なん……だと…………?」

 愕然とした顔をするジルフリート様。私もきっと、同じ表情をしているのだろう。

「ではやはり、婚約か…………ゲホゲホしなければ……」
『ああ、そんなことはないですよ、ジルフリート様! もちろん他に方法があります』
『やだなぁ兄さん、僕達そんな鬼畜に見える?』

 今やってることは、その辺の鬼畜が泣いて逃げるくらいの所業だと思うの!

『婚約解消の反対をすればいいんですよ! そうしたら扉が開きます』
「……反対? 婚約するといえばいいのか」
『それだけだと、今までどおりじゃないですか。それだと、お二人はどうせまた、拗らせて変な仲違いをしかねないですわ!』

 アリアーヌの発言に、私もジルフリート様も不満で一杯の顔で眉を顰める。
 しかし悔しいけれども、アリアーヌの言うことを否定しきれないような気もする。

『だからね、もう一歩先に進んでもらうことにしました!』
『そうそう、兄さんへのボーナスタイムだよ!』

 ……ボーナス?



『『二人がキスをしたら、その部屋から出られまーす』』



 パンパカパーンという効果音と共に、映像の中でクラッカーが弾けて紙吹雪と紙テープが飛び散った。
 え? どういうこと? 今ここでキスしろってこと?

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