東京の優しいところ
「好かれてるのは知ってるって。やから今まで通りでええやん」

「家族と居る時もお前のことばっか考えてる」

「気持ち悪いな、それ」


健治は思わず苦々しく笑った。


「家族と居る時は家族を愛して、お前と居る時はお前を愛してって、そんな器用なことできんて」

「それなら家族だけ愛してあげて。じゃあ、さようなら」

「そしたらお前はどうなるん?」


と返してきた遠藤の、その言葉の意味が、健治にはよく分からず、「わけ分からん」と捨てて帰ろうとしたが、「わけ分からん」ままにしておくことに気持ち悪さを感じ、歩き始めた足をUの字を描かせるように遠藤の方へ向かわせた。
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