東京の優しいところ
(2)
健治は大学を卒業するまでを広島で過ごした。大手のOA機器メーカーの営業職に就くことが決まり、品川の本社での勤務を希望したが、それは叶わず、大阪支社への配属となった。

勤務初日に、事務員の佐々木に、「彼女はおらんのん?」と質問され、「いないです。ってか僕ってホモなんで彼女は一生いません」と、可愛げもなく白けて答えたものの、佐々木の方は、「そう言って変な女が近付かないようにしてるんやろ?本命いるんだ?正直に言いなさい」と、いつまでも譲らなかった。そしてその日の内に、健治は広島に居る女と遠距離恋愛をしているということになった。
< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop