結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 秘書との会話を終えた龍一がカフェテリアを出ようと、こちらに歩いてくる。すれ違う、ほんの少し手前で凛音は彼に声をかけた。

「あの、おつかれさまでした!」

 冷ややかな視線が一瞬だけ凛音に向けられたが、龍一はすぐに顔を背け、事務的な答えを返すだけだ。

「あぁ。番組の反響については報告書を頼む」
「はい、かしこまりました」

 遠ざかっていく彼の背中を凛音はじっと見つめていた。

 穏やかな微笑も優しい声音も、初対面のテレビクルーたちには惜しみなく贈られていたのに……凛音は一度も受け取ったことがない。

(私に向けられるのは、あの氷のような眼差しだけ)
 
 凛音の所属する広報部は二十二階にある。

 社内報などの内向きの仕事を担当するチームとメディア対応など外部とのやり取りを主とするチームに分かれており、凛音は後者だ。

「おつかれさま! 家族の肖像、どうだった?」
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