結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
「俺が行くから待ってろ」

 その声に目を開けると、もう龍一はサアサァと降る細い雨のなかを駆け出していた。

その背中を見つめる凛音の頬が急激に熱くなる。

(なに考えてたんだろう、私……)

 さっきのあれはひとりよがりな凛音の思い込みだったのだろうか。

 それとも――。

「龍一さん」

 凛音は小さく彼の名をつぶやいた。それだけで胸が温かくなり、ささやかな幸せで満たされる。
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