結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 彼は屈託なく、おなかを抱えて楽しそうに笑う。

 あまりの無邪気さに、凛音も龍一も呆気に取られてしまった。目尻にあふれた涙を拭いつつ、彼は言う。

「天下の水無月社長より洞察力は凛音さんのほうが上ですね。おもしろいな、血はつながらなくても有能さは伝染するのかな」

 予想外の成り行きに驚愕する龍一に、譲はぺこりと頭をさげる。

「すみません。彼女の推理は正解です。同じ罪を抱えるもの同士で夫婦になれば誰も傷つかない……そんなふうに考えました」

 譲はそこで言葉を切ると、ふぅと切なげなため息を落とす。それから、優しい目で凛音を見る。

「勝手に仲間認定して、失礼しました。永遠の片思いは僕だけでしたね。どうか、愛する男性と幸せになってください」

 帰宅の道中、ハンドルを握る龍一は不機嫌そうな顔でブツブツとつぶやいた。

「人を見る目には自信があったのに。今回にかぎっては眼鏡が曇っていたな。ほかの女を思いながら凛音を妻にしようだなんて――」
「わたしたちに彼を責める権利はまったくないような」

 あっさりと縁談の白紙を受け入れてくれた彼に感謝こそすれ、責めるなんてとんでもないことだろう。助手席から凛音は正論を返すが、龍一はいつまでも納得できないようだった。
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