ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが

 ダナース国でピンクブロンドの髪は珍しい。その女性はすぐに誰のことが思い当たったようだ。

「オードランさんのことですか? よく刺繍の品々をお収めくださいますが、今日はいらっしゃっていないですね」
「そうか……」

 きっと来ていると思っていただけに、予想が外れてがっかりする。だが、それと同時に、別のことが気になった。

「彼女は刺繍を収めているのか?」

 てっきり、買いに来ているのだとばかり思っていた。

「はい。オードランさんはとてもお上手なので、当店でも特に人気の品となっております。ご覧になられますか?」
「見てもいいか?」
「もちろんです」

 女店主はにこりと微笑むと、店内に置かれた商品の中から何点かを選んで持ってきた。

「こちらですよ」

 それは、数枚のハンカチとテーブルクロスだった。小鳥や花、小動物などが刺繍されており、どれも熟練の職人が作ったと言われても違和感ない出来栄えだ。
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