ループ5回目。今度こそ死にたくないので婚約破棄を持ちかけたはずが、前世で私を殺した陛下が溺愛してくるのですが
「まあ、別にいいけどね」

 最初から正式な結婚などする気がないのだから、顔など合わせない方がいいだろう。

「それにこのお部屋、すごく素敵だわ」

 一度目の人生の記憶のせいで、てっきりキラキラ輝く煌びやかな部屋に案内されるのだとばかり思っていた。しかし、実際に案内された部屋はとてもシンプルで、調度品も落ち着いたデザインのものが多い。
 煌びやかな部屋も素敵だとは思うけれど、正直言うとボロボロの離宮で育ってきたシャルロットにとってはこういう部屋のほうが落ち着くのだ。
 
 部屋の広さも十分、調度品も一通り揃っているし、隙間風もない。
 まさに、理想的な環境に思えた。

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