私たちはこの教室から卒業する。
 目覚めても、机に顔を伏せて眠ったふりをしたまま、和真の気配を感じていた。

 そっとバレないように、薄目で彼を見た。彼はこっちを見ている事が多いから、起きている事がバレてしまいそうな時もあった。

 いつの間にか和真が横の机で一緒に眠っていた時もあって、彼が起きるまでずっと見つめていたりもした。

 彼は普段キリッとしていてカッコイイ。  
 でも寝顔はうちにいる猫みたいで、可愛かった。

 元々私は和真に想いを寄せていたのかな? 他の女子と物凄く親しげに話していると少しムッとしたし、この教室で一緒にいられるこの放課後の時間が好きだし。雨が降って困っていた時も和真が濡れてしまうのに私に傘を貸してくれたりして優しいし……。

 考えれば考えるほど、夢の中の彼よりも、和真の事で頭がいっぱいになっていく。

 寝顔が愛おしく思えてくる。
 胸が高鳴る。
 
 最近まで夢の中の彼が好きなのかもとか思っていた。

 なんだろう。夢の中の彼に対しての気持ちと、和真への気持ちがなんか違う。

 ――これが本当の、恋?

 私は頬杖つきながら寝ている彼を見つめ、声をひとつも出さず、口だけを動かした。丁寧に。

 す・き・だ

って。

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