私たちはこの教室から卒業する。
 葵が『彼』と出会ったのは、僕達が中学三年生になって、数ヶ月たった時だった。

 前日夜更かしをしてゲームに夢中になっていたせいで、授業中に居眠りをしてしまい、初めて出会った、らしい。

「今日ね、授業中、一瞬寝ちゃったんだけどね、夢の世界で、カッコよくて、理想の男の子に会えたんだぁ」

 僕たちが過ごしている教室には机が縦五列と横六列あり、葵は一番窓側で前から三番目、僕はその隣の席だった。

 帰る時間、隣の葵は鞄に教科書を入れたりしながら、ゲームのキャラの話題で盛り上がったんだとか、その夢の内容を詳しく話してきた。
 
 その時はただ「へぇ、そうなんだ」って軽く返事をして、聞き流す程度だった。僕は嫉妬なんて全くしていなかった。だって、夢の中の人だから。しかもどうせ、夢だから、もう二度と会うって事はないだろうなって思っていたから。
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