カモフラ婚～CEOは溺愛したくてたまらない～
結婚に乗る気じゃなかった新郎の冷たい態度に嫌気がさした新婦が、結婚式直前に他の男と逃げてしまいました、なんて現実をいったいどう伝えればいいのだろうか。

おばさんの言葉に誰も応えらない。

俯いて蒼空の返答を待っていた私に、おばさんはゆっくりと歩を進めて「由華ちゃん……？」と呼び掛けながら顔を覗き込んできた。

「あ……」

突然のことに顔を上げると、おばさんは確信したかのように満面の笑みで微笑んだ。

「久しぶりね！元気だった？どうして由華ちゃんがここにいるの？蒼空とはずっと連絡とってたの？この子何も言わないから」

一方的なマシンガントークに苦笑いしながら、どう答えようかと考えていると。

「由華ちゃんは俺と結婚するんだよ」

蒼空が何の前触れもなく言葉の爆弾を投下した。

「なんですって……？」

おばさんは信じられないという表情で、私と蒼空を代わる代わる見つめて困惑している。

「なに言ってるの？確かにアンタが結婚式の招待状を送ってきたときは名前が一緒だなと思ったし、一度合わせてもらった時も、遠目から見たら由華ちゃんそっくりだなとも思ったけど。それでも別人だったでしょ？それなのにいきなりどういうことなの？」

「確かにそうだったんだけど、この式場で偶然由華ちゃんと再会したんだ。それから急速に惹かれあった。気持ちがどうにも抑えられなくなって、彼女と別れて由華ちゃんと結婚することになったんだ。かなり強引な形だったけど、由華ちゃんも合意してくれた」

いろいろ話が着色されているし、フェイクの花嫁ということがカットされている。

しかしあながち繋がらないこともない物語に、私も引き攣った笑顔で対応した。

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