孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
傍らにスマホを置き、おにぎりのパッケージを開けた。
仕事から離れて少しぼんやりした時、頭をよぎるのは、何日経っても忘れられない恥ずかしすぎる失敗……。


「~~っ……」


私はせり上がる羞恥に悶絶して、テーブルにゴンと額をぶつけた。
操とここで、霧生君のことを話した、仕事始めのあの日――。
私は仕事を終えてマンションに戻ってから、連絡先がわかる中学時代の友人に、片っ端からメールやLINEでメッセージを送った。


霧生君には、親しくしている友達はいなかったけど、多分彼を覚えていない人はいない。
頭の片隅に残っているはずだ。
私すら覚えていない、霧生君と私の間のことを、皆が知ってるわけがないけど、もしかしたらなにか見聞きしたことがあるかもしれない。
それが聞きたかった。


その日の内に半分くらい返信があったものの、手がかりに繋がるような芳しい情報はなく、私は静かに追い詰められた。
こうなったら、過去は関係ない。
大事なのは今、霧生君に好かれること!!……な~んて思考回路に振り切ってしまい――。


霧生君にも皮肉られた、らしくない色仕掛け。
今まで、男性に自分から迫ったことなんてないのに、無謀だった。
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