孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
僕で彼女の戸籍を汚し、一生刻みつけてやりたいという腹いせも否定しない。
だから期間限定で十分だった。


ところが――。
茅萱さんとの生活は、楽しかった。
これも、彼女が初恋の相手だったからこそ、だろうか。
――らしくない。
僕は彼女に、触れたいと思ってしまった。


自ら提案した、『夫婦らしいこと』。
性欲が湧くなんて、生まれて初めてだった。
茅萱さんが承諾してくれて舞い上がり――事の半ばに至って、僕は自分の無謀さを後悔した。


僕には、女性経験がない。
興味すら持たずにいたから、知識も必要最低限だ。
しかし、身体は健康な成人男子。
知らない情欲に溺れ、興奮は最高潮に達した。


彼女の希望で、電気を落とした暗い部屋。
視界は悪く、手元すらよく見えない。
緊張と、それ以上の興奮で手が震えた。
初めてオペの執刀をした時でも、あんなに震えなかった。
予想以上に手間取って、焦りばかりが増した。


経験と知識不足、尋常じゃない興奮と緊張、そこから来る焦り……すべてが悪循環となり、僕は失意のどん底に落とされた。
無様すぎる失敗を、茅萱さんにも見られてしまった。
――きっと、僕に経験がないことも気付かれた。


僕は彼女が言うような『立派』な男じゃない。
完璧にも、ほど遠い。
男としては、欠陥だらけだ。
こんな情けない僕を、人生で唯一好意を抱いたことのある彼女に、晒してしまうなんて……。
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