孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
霧生君は呆れ顔で足に肘を置き、頬杖をついて斜めの角度から見遣ってきた。
まるで聞く耳を持ってくれない。


「だから、それも……」

「どうしてそんなに嫌? やっぱり僕が嫌い?」


私に反論する隙を与えず、ちょっと不貞腐れた様子で理由を質してくる。


「どうしてじゃない。離婚中止で、結婚継続なんて!」


私が言い募ると、頬杖を解いて溜め息をついた。


「約束する。僕、君の理想の男になるよ」


組んでいた片足をソファに置いて抱え込み、顎をのせて目を伏せる。


「え?」

「脳外科医としても、男としても。仕事は今まで以上に頑張るし、君に恥ずかしいと思わせない男になるから」

「っ、霧生君、そんな」

「他に要望があれば、なんでも聞く。あ、離婚以外で」


ちらりと横目を流されて、私の心臓がドキッと跳ね上がった。


「ズルいよ、そんな言い方……」


目を合わせられず、意味もなく宙に彷徨わせる。
私は今だって、一緒にオペに入る看護師として、脳外科医の霧生君を信頼し、尊敬している。
男としても……霧生君は霧生君だし、今のままでも恥ずかしいなんて思わない。
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