孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
でも、契約期流れでダラダラ続く結婚なんて……一生の問題なのに、いくらなんでも納得がいかない。
そりゃ、私の家族には契約結婚開始時に紹介してあるし、一生の問題にまつわる事務手続きや面倒なあれこれはすべて済ませてある。


霧生君の申し出通り、離婚届を提出しない、それだけで、私たちはこのまま一生『夫婦』で違いないけれど。
――それなら、もっと根本的な問題がある。
私は、涼しい顔でテレビを眺めている彼を、そおっと窺った。


「霧生君はさ……」


躊躇いがちに呼びかけると、彼も私に視線を戻す。


「その……私のこと、好きなの?」


ズバリ探る質問がむず痒くて、私はソファの上で両足を抱え込んだ。
霧生君はきょとんとして、瞬きを繰り返し……。


「愚問でしょ」

「はぐらかさないで」

「はぐらかしてない。好きだよ、もちろん」


ムキになって頬を膨らませた途端しれっと言われ、思わず目が点になった。
霧生君は、むしろ私の反応が怪訝そうに、眉根を寄せる。


「人生に女は不要と決めていた僕が、君と二人の生活は息苦しくないどころか楽しかった」
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