孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
再びテレビを見ながら、頭の中で理由を探すように、指を折り始める。


「女に触れたいと思ったのも、欲情したのも君だけだ」

「っ、それは霧生君が試したのが私だけだからで、ただの思い込みじゃ……」

「僕にとって、人生に必要な女は君だけ。他を試す必要がないことは、僕が一番よくわかってる」


ここでもやけに芯のある持論で遮られ、私は口ごもった。


「ど、どういう……」


私の戸惑いを察してか、霧生君は肩をひょいと動かし、足元のラグマットに目を落とす。


「日本にいた頃、いい思い出なんか一つもなかったけど、君のことだけは今まで何度も思い出してた」


やや掠れた低い声に導かれるように、私の胸がトクンと跳ねる。
霧生君は「ふう」と声に出して息を吐き、喉を仰け反らせて天井を仰いだ。


「会いたかったのか、そうではないのか……自分でもよくわからずにいた。でも、恋愛なんかどうでもいい僕にとっても、初めては特別だったみたいだ」


私にと言うより、一人で回想するように呟く。


「……?」


口を噤んで黙りこくり、言葉の先を待つ私に視線を流し、


「なるほど。覚えてないんじゃなくて、全然伝わってなかったってことか」
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