婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
あれから、どのくらい眠っただろうか。

気がつけば外は真っ暗で、時刻は19:00を回っていた。

さんざん寝たのに眠気は取れないし、起きようという気力も湧かない。

でも、今日は21:00頃に智明が帰ってくる予定だから、夕飯を作ったりしなきゃ。

のそのそと身体を起こし、私はふと、あることを思った。

「そういえば私、しばらく生理きてないような⋯」

一抹の不安を覚え、スマホの生理管理アプリを開くと、最後の生理は2ヶ月前。

"妊娠"という2文字が頭をよぎり、財布とスマホをポケットに突っ込んで、薬局へと走った。

とりあえず真実を確かめるべく、妊娠検査薬を購入し、自宅のトイレで検査してみると陽性反応が出て、少し戸惑う。

嬉しいはずなのに、この事実を智明が知ったら捨てられてしまうのではないかという不安も襲ってきて、なんとも言えない気持ちになった。

このことを智明に言うべきか、もう少し黙っていようか悩んでいると、タイミングを見計らったかのように智明の声がした。

「ただいま、蛍いないの?」

「おかえりなさい。トイレに行ってたの」

「そっか、久しぶりの蛍だ」

「まずスーツ脱いできて、それからにしよう。シワになっちゃう」

「それもそうだね。スーツ脱いでくるから、ちょっと待ってて」

私は何事もなかったかのように智明を出迎えた。
< 89 / 145 >

この作品をシェア

pagetop