"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「ぬくぬくと受験の事だけを考えて、何不自由なく、美大を受験したひぐっちゃんに私の気持ちなんて分からないよ……!」

彼女は店内にもかかわらずに、少しだけ声を張り上げて自分の考えを主張する。樋口さんは彼女にバイトの上がり時間を聞いて、詳しく話を聞く事にした。

彼女が甘いものを食べたいと言ったので、駅ビルに隣接しているホテルのカフェへと移動。ディナータイムだが、スイーツもある。焼肉を食べてから僅かの時間しか経っていないのに、甘いものは別腹と言うことで私は彼女と一緒にスイーツの盛り合わせをオーダーした。

「美味しー! ホテルのカフェとかヤバイよね。高級スイーツ食べれたから、ひぐっちゃんと会えて良かった」

彼女は非常に切り替えが早いタイプなのか、スイーツを頬張りながら幼い子供みたいな笑顔を浮かべる。小さめサイズのイチゴたっぷりのショートケーキ、ガトーショコラ、ブルーベリーチーズケーキのアイスクリーム、フルーツロールケーキが色とりどりにワンプレートに盛られている。

「ひぐっちゃんの彼女さんのお名前は川崎もえみさん?」

「もえみと書いてめぐみと読みます。坂口さんのお名前も聞いても良いですか?」

「そっか、めぐみちゃんなんだね。凛々子だよ。皆からはりりちゃんって呼ばれてる」

「りりちゃんね、可愛い名前だね」

彼女と話してみると、今時の女子高生みたいな感じで敬語は使わないタイプ。初対面だけれど、私の事をめぐみちゃんと呼んでいる。

「坂口さん、やはり、ご両親に美大の件はお許しを得られない感じですか?」

「美大ってお金も他の大学よりもかかりそうじゃん? しかも、何の役にも立たないとか言われててさ。ほら、うちは妹弟がいるから、就職しろってうるさいんだ。だから、バイトしてたの」

何となく感じているのは、彼女の心の奥底には苦難が隠されているようだが、樋口さんには心を開いているような感じがした。だからこそ、彼女は樋口さんにだけは甘えていて、
ご両親には隠している本心をさらけ出せるのかもしれない。
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